オーソライズドジェネリック(AG)

 ジェネリック医薬品(後発医薬品)という言葉は、
ジェネリックメーカーによるCMや医療機関(病院・薬局など)で聞いたことのある方は、
以前と比べてかなり増えてきたと思います

 実際に調剤薬局で働いていると、
「ジェネリックにしますか?」と尋ねる前に患者様から、
「ジェネリックでお願いします」とおっしゃるほど、
世間に浸透してきているんだなぁと実感しています
数年前までは、「え?ジェネリック?なにそれ?」
という反応が多かったのですが、だいぶ今では変わりましたね

 ところで、オーソライズドジェネリックというものが最近医療(特に調剤)業界で話題になっています
そのことについて今回はお伝えしていきたいのですが、
その前に、ジェネリックについて少し述べたいと思います

 新薬は特許期間(約10~20年)が過ぎると特許切れとなり、
他のメーカーも同じ成分で医薬品を作ることが出来ます
それが、ジェネリック医薬品(後発医薬品)です
しかし、実はその新薬の全ての特許が切れるわけではないということはご存知でしょうか?
 
 その医薬品の“物質特許”が切れただけで、
「製剤特許」や「用法特許」などが残っていれば、
同じ医薬品として発売することはできないのです

 たとえば、錠剤のコーティング技術の特許が切れていない影響で先発医薬品とは違うコーティング技術を使用したり、
自分の病気に使う薬が実は先発医薬品にしか適応がなくジェネリックを選べない、なんてことも存在します
もちろん、全てのジェネリックがそうではありません。
しかし、実際にそういったジェネリックは少なからず存在するのは確かです

 錠剤を小さくしたり口どけをよくして飲みやすくしたり、
低刺激性の添加物に変えてアレルギー持ちの人にも使いやすくするなど、
ジェネリックメーカーが努力した“高付加価値”のジェネリックも存在します
しかし、はたして全てのジェネリックが良いのかと問われれば疑問が残ります
ある小児用の粉薬が、先発品ではすぐ水に溶けて飲みやすく設計しているにもかかわらず、
数社のジェネリックは水に溶けにくく、中にはまったく水に溶けない粉薬まであるという始末です
これではお子様に薬を飲ませるときに服用方法に制限が加わり、
非常に服用しづらい薬といわざるを得ません。
悪い言い方ですが、そうした創意工夫や努力をしていないと見られるジェネリックメーカーもごく一部で存在します
そのため、ジェネリックは度々、選びたくないという医師や患者様も少なくありませんでした
専門家である薬剤師が、真に国民から支持されるべきジェネリックを選定することも重要な役割だと思います

 そこへ、オーソライズドジェネリック(以下:AG)の登場です
AGとは、“特許使用権利”を認めたジェネリック医薬品です
特許期間が残る「製剤特許」や「用法特許」などの使用権を認めることにより、
先発品とまったく同一の医薬品を作ることができます
早い話、先発品と同じ製造ラインで作ってパッケージだけ変えて安く売るという具合です

(まったく同じ添加物と製造過程で作ることが可能、ということですので、
ジェネリックメーカーが新たに設備投資して自社でAGを作っても良いですが、
先発メーカーの既存の設備を使うほうが安く済みますので、そのほうが現実的かもしれません)

 また、それだけでなく、AGは先発医薬品の特許が切れる半年前から、
独占販売が認められており、他のジェネリック医薬品に先駆けて発売が可能です
今売れまくっている大人気の先発医薬品の特許が切れたときには、
30社以上のジェネリックメーカーからジェネリックが同時発売されていますので、
それはもう壮絶なシェア争いが繰り広げられます。そこを独占的に先駆けて発売することによって、
先に悠々と大幅にシェアを伸ばすことが可能になります
すでに採用されているジェネリックのメーカーを後々変えるということは、
医療機関(病院や薬局)も患者様も、
それなりのメリットがなければ負担になることも多いので難しい場合もあり・・・
この先行発売は相当のアドバンテージが得られます
また、ジェネリック医薬品の開発に必要な試験を省略できることもメリットとしてあげられます。
なんだかいいことづくめで、ジェネリックメーカーはなんでみんなAGにしないのか
と思われるかもしれませんが、AGにもデメリットはあります

 まずジェネリックメーカーにとって、その特許権の使用料が発生することにより、
それなりの対価を先発医薬品メーカーに支払います。
他のジェネリックより、AGが売れたときの利益は使用料を支払っている影響で目減りして少ないのです
特許権の使用料はAGの大きな優遇策やメリットを考えるだけでも、
決して安くないはずですので、ジェネリックメーカーにとってはAGにする大きなメリットはあっても、
利益面では薄利多売状態かと思われます
せっかくAGとして発売したとしても、売れなければむしろ損になることすらあるのです
つまり、AGにする先発医薬品の選定は、これは絶対売れる!という自信がなければ
むしろ普通のジェネリックとして売ったほうがまだ利益的にはマシなことも多いと思われます

 また、患者様にとってもデメリットをあげるとすれば、
AGは他社のジェネリックの価格とくらべて最近では薬価比で10%程高い設定にされてしまっている現実があります
ジェネリックの大きなメリットでもある価格を抑える点では他社のジェネリックと比べるとやや不利な印象も受けます。
しかし、自己負担割合(1割~3割負担)を考えれば、全額その薬価差の影響を受けるわけではないので、
AGのメリットを考えればそれほど大きな問題にはならないと思われます
薬価がAGもそれ以外のジェネリックも同じ価格であれば、
AGとは違うメリットを訴える高付加価値のジェネリックでなければ、
真っ向勝負で立ち向かうのは難しい、
それほどAGの存在価値や脅威を多くのジェネリックメーカーは認識しています

 医療従事者や患者様にとってみれば、AGは多くのメリットと可能性を秘めています
いままで多少なりとも、ジェネリックに対して不信感を持っていた方は、
AGはまさに先発医薬品とジェネリックのいいとこどりだと思います
今までと飲む薬の中身はほぼ同じで安心感があり、なおかつ医療費を安く出来ます。
医師も先発品とまったく同等なら切り替えもしやすいです。
「AGに変えてから効き目が悪くなった」なんてことも、
ハッキリとAGの影響ではないと限りなくいえるでしょう。
AGはまだ数種類程度しか発売されていませんが、
ジェネリックの新たな選択肢が増え、
今後ますます多様な医療ニーズにこたえるためにも、AGに期待していきたいと思います

正社員 薬剤師 茨城県 30代 男性

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