世の中には、どんな方がいるんだい?
なんでもかんでも、天然物がいい(安全)って言う方がいるんですよぉ~
なぁ~にぃ~? やぁっちまったなぁ~!
なんていうネタをやっている芸人さんが大好きな、難病おじさん薬剤師です。(なんのことかさっぱりわからない方は、Google先生に「クールポコ」と伺ってみてください。お正月にはよく出てらっしゃいます。)
導入部分はさておき、世の中に歴然と以下のようなイメージがあるんじゃないかと思います。
良いもの |
悪いもの |
天然物
植物性
混ぜ物なし
……… |
人工物(養殖物)
動物性
ブレンド
……… |
このイメージが絶対正しいんだから、余計なことを言うな! と思う方は、ここから先は絶対に読まないで下さい。…..(大げさ?)
■レベル1 ブレンドは良くないもの?
二昔くらい前に、日本でお米が不足してしまったために海外から輸入したことがあったのを覚えて(知って)らっしゃいますでしょうか? その時に悪名高くなってしまったのが「ブレンド米」。 要は、物凄く高い「国産米」には手を出しづらいけど、安い「輸入米」だと安全性や味が心配… そこで国産米と輸入米を混ぜた「ブレンド米」というのが登場。ところが、この「ブレンド米」には美味しくないと評判が悪いものが多かったので、
ブレンド = コストを下げるためにしかたなくするもの
というイメージが世に定着したように思います。 でも、よく考えてみて下さい。田んぼにも日当たりの良いところと悪いところがありますし、大規模なところなら1日で全部収穫できないですから一番収穫すべき時より早いものと遅いものが混在していますので、極端なことを言えば袋ごとに味が変わったとしてもおかしくない。 ところが、消費者は「同じ銘柄の商品は同じ味」と思っていることが多いので、味が変わるとクレームがつくんです。ゆえに、世の中に出回っているお米の多くは、消費者の期待通りの味を維持する目的でブレンドしているんだそうです。(昔、お米関係の仕事をしていましたので存じております。)
実は、同じ味を維持するほうが難しいので、ブレンダーには高い技術が求められるのです。
■レベル2 植物性と動物性はどっちが健康にいいの?
ここで問題です。 a. ごま油 b. オリブ油 c. バター d. マーガリン を 単位重量あたりのカロリーが高い順に並べ替えてください。
10年以上かけてこれを1000人くらいの方に伺っていますが、大半の方が
カロリー
高
|
|
|
低 |
c. バター
↓
a. ごま油 か d. マーガリン
↓
b. オリブ油
|
と並べます。(ごま油とマーガリンの順は半々くらいです。)ところが、グリコさんがやってくださっている栄養成分ナビゲーターによれば、
食品 |
熱量(kcal/g) |
オリーブ油
ごま油
ソフトタイプマーガリン・家庭用
有塩バター |
9.21
9.21
7.69
7.45 |
と、実はバターが一番単位重量あたりのカロリーが低いんです。 まさに植物性=健康に良い、動物性=健康に悪いイメージマジック!
え?本当!?と思うかもしれませんが、オリーブ油やごま油は純度100%の脂質ですが、バターやマーガリンに脂質以外のものが含まれています。 脂質は9kcal/g、炭水化物とたんぱく質は4kcal/g、水は0kcal/g。バターやマーガリンには炭水化物やたんぱく質だけでなく、15%程度の水分が含まれているので、同じ分量を摂取するならば、バターやマーガリンの方がカロリーは低いです。
バターよりマーガリンのほうがカロリーが低いと思うのも、
バター=動物性=健康に悪い
マーガリン=植物性=健康に良い マジック。
実際のところ、これらの製品のカロリーはほぼ同じと言って良いと思うのですが、じゃあ、本当にマーガリンのほうがバターより健康にいいのか? というと、実はそうでもないんです。というのが、植物性の油脂は基本的には常温で液体の物がほとんどななので、あのような状態にするためには工業的に手を加える必要があります。その製造過程で「トランス脂肪酸」と呼ばれる、動脈硬化にとても悪影響を及ぼすものが誕生してしまうんです。したがって、「トランス脂肪酸フリー」の物を選ばない限りは、バターもマーガリンも変わらない(むしろマーガリンの方が悪い)んです。
■レベル3 天然物が善?
まずは食べ物。 お魚なんかは、養殖物よりも天然物の方が重宝がられます。が、例えばマグロ。まだ完全に流通してないですが、マグロを養殖すると、全身が大トロになるんだとか。運動不足で本来の赤身になるはずのところに脂がついてしまうのがその理由なわけです。現在は、大トロの方が重宝がられていますので、養殖物のほうが良いってことになのかも?
また、フグについて言えば、きちんと管理すれば養殖物の方が安全に食べることが出来ます。というのが、フグはテトロドトキシンという毒を持っていますが、これは体内で合成しているのではなく、食べているプランクトンに微量に含まれているものが蓄積してフグの体の中で濃度が高まっただけなんです(生物濃縮といいます)。フグ自身はテトロドトキシンで死なないけれども、体外に捨てる仕組みもないので、体内にどんどん溜まって濃度が濃くなっていくわけなんですね。 すると、テトロドトキシンを持たない餌だけを与えていれば、無毒のフグが出来上がり。 天然物よりも養殖物のほうが安全であるといえます。
■レベル4 天然物崩壊(やっと、薬の話かい!?)
この薬。天然物だったら怖いですよね? ビバ人工物!
40代男性薬剤師@暑すぎてホットポコ